ドラマ「御上先生」が話題に。内容凄すぎ。学園ドラマのイメージとはかけ離れ、度肝を抜かれた人も多い。その脚本家は詩森ろば。詩森ろばさは、劇作家・脚本家として活躍中。演劇だけでなく、映画やドラマでも評価が高い。2025年放送のドラマ『御上先生』では、教育現場を描き、話題を集めた。そこで、本記事では、詩森ろばの歩みと作品の魅力を紹介。
詩森ろばー『御上先生』の脚本家
『御上先生』(みかみせんせい)は、2025年1月19日からTBS系列の日曜劇場枠で放送中のテレビドラマです。
tbs.co.jp主演は松坂桃李さんで、脚本は詩森ろばさんが担当しています。
あらすじ:
東大卒のエリート官僚、御上孝(みかみ たかし)は、
文部科学省で日本の教育改革を目指していましたが、現実の壁に直面。
制度を作る側にいても変革が難しいと悟った彼。
現場からの改革を決意し、
官僚派遣制度により私立高校「隣徳学院」の3年2組の担任教師として赴任します。
生徒たちと向き合いながら、教育現場に蔓延る問題や大人たちの権力争いに立ち向かい、
教育の真の姿を追求していく物語。
「御上先生」をなぜ描こうと思ったのかー官僚派遣の教師というテーマ
「官僚派遣の教師」というテーマは、文科省の若手官僚が公立学校に派遣される制度についての記事を読んだことがきっかけで生まれました。2020年にこのテーマをもとにプレゼンが行われた際には、公立高校を舞台にストーリーが考えられていました。
物語のスケールを広げるために、文科省という視点を加えるのは面白いのではないかと考えられました。最初は直感的な発想でしたが、実際に官僚の方々に取材を重ねていくうちに、彼らがとても真剣に仕事に取り組んでいることが伝わってきました。
「御上先生」で教育の進化を映し出す詩森ろばの取材
詩森ろばは「御上先生」でも教育をテーマにした脚本の執筆にあたり、本で調べるだけでなく、
実際に学校を訪れ、現場の声を直接取材した。
その結果、教育の進化を肌で感じる機会を得たという。
詩森ろばによれば、「学習の制度は以前よりも格段に向上し
理論的な枠組みもさらに洗練されている」とのこと。
その変化を作品に反映させることが重要だと考えているようだ。
特に印象的だったのは、「生徒に考えさせる」という教育のあり方だった。
優れた教育者は皆、この方針を実践しており、生徒が主体的に考える力を養うことが重視されている点に感銘を受けたという。
「まさに今の教育の最先端を象徴する教師像ではないか」と、その重要性を強調していた。
詩森ろばの経歴
宮城県仙台市出身の詩森ろばは、劇作家であり演出家としても活動。
彼女は早稲田大学在学中に演劇を始め、
1993年に劇団「風琴工房」を立ち上げた。
それ以来、全ての作品の脚本と演出を手掛け、
社会的なテーマを扱った作品を発表してきた。
詩森ろばさんが演劇に興味を持ったきっかけ
詩森ろばさんが演劇に興味を持ったきっかけは、小学3年生のとき。
必修クラブで演劇部を選んだこと。
もともと本が好きで、小学校時代は図書館で多くの本を読んでいました。
小学2年生のときには、学芸会の劇のために初めて戯曲を書いた経験もあり。
4年生のとき、演劇部の先生から童話を戯曲にするよう勧められ、
それを高く評価されたことが、演劇への関心を深める大きな要因に。
また、母親に連れて行かれた「夕鶴」や、
中学生のときに観た黒テントの公演など、
観劇体験も彼女の演劇への情熱を育む重要な役割を果たしました。
詩森ろばの主な作品
- 2013年『国語の時間』で読売演劇大賞優秀作品賞を受賞。
- 2016年『残花』『insider』で紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞。
- 2017年『アンネの日』などの作品で芸術選奨文部科学大臣賞新人賞を受賞。
- 2018年以降、俳優の田島亮とユニット「serial number」を結成し、活動の幅を広げる。
- 2019年映画『新聞記者』の脚本を担当し、日本アカデミー賞優秀脚本賞を受賞。
この作品では、報道の自由や政治の問題を鋭く描き、
多くの観客から高い評価を受けました。
その結果、詩森の脚本は綿密な取材と鋭い視点に基づき、
多くの観客に衝撃を与えることに。
詩森ろばの代表的な脚本
詩森ろばの代表作ー①『国語の時間』(2013年)
『国語の時間』は、日本の教育現場を舞台にした社会派演劇。
物語は、ある高校の国語教師とその生徒たちを中心に展開。
教師は、生徒たちに「言葉とは何か」を問いかけ、
言葉を通して自分を表現することの大切さを伝えようとする。

しかし、現実の教育現場では、受験競争や
学校の管理体制の問題が重くのしかかる。
生徒たちは、自分の考えを自由に表現することが難しく、
学校側も成績や進学実績を重視するあまり、
教育の本質を見失っている。
そんな中、教師と生徒が本音でぶつかり合い、
言葉の力を再認識していく。
この作品は、単なる学園ドラマではなく、
日本の教育のあり方を鋭く問い直す内容である。
教育制度が抱える矛盾や、
生徒たちの本当の声を拾い上げる教師の葛藤がリアルに描かれ、
多くの観客の共感を呼んだ。
結果として、観る者に「教育とは何か」
「言葉の本当の意味とは何か」を深く考えさせる作品となった。
詩森ろばの代表作ー②『残花』『insider』(2016年)
「残花」―戦火に翻弄された女性たちの生き様
戦時中の日本を舞台に、
戦争の影に翻弄された女性たちの生き様を描いた作品。
物語は、戦争の混乱の中で懸命に生きる女性たちの視点を通じて、
戦争の悲劇と社会の変遷を浮き彫りに。
詩森は、詳細な史実調査を行い、
当時の社会情勢や女性たちの置かれた立場をリアルに描写。
この作品では、
戦争の記憶を風化させないためのメッセージも込められており、
観客に強い印象を与えた。
「Insider」―金融業界の闇と倫理を問う
一方で、『insider』は、現代の金融業界を舞台に、
その裏側に潜む権力闘争や倫理の問題を鋭く描いた作品である。
金融市場の不透明な取引、巨大企業の内部告発、
利益優先の社会構造などがテーマとなっており、
リアルなビジネスの世界を再現している。
詩森は、この作品を制作するにあたり、実際の金融関係者への取材を重ね、
業界の実態を深く掘り下げた。その結果、ビジネスの世界で生きる人々の葛藤と、
社会的責任について考えさせる作品である。
詩森ろばの代表作ー③『新聞記者』(2019年)
映画『新聞記者』は、2019年6月28日に公開。
主演は松坂桃李さんとシム・ウンギョンさんが務めました。
この作品は、政府の情報操作やメディアの在り方を鋭く描き、
社会的な反響を呼ぶ。
『新聞記者』のストーリー
東都新聞の記者・吉岡エリカ(シム・ウンギョン)は、匿名の情報提供を受け、
政府による大学新設計画の裏に隠された疑惑を追い始めます。
彼女の父親は日本人でありながら外国籍の母を持つことから、
幼少期に差別を受けた過去があり、
「権力に対して真実を伝えること」に強い信念を持っています。
一方、内閣情報調査室(内調)で働くエリート官僚・杉原拓海(松坂桃李)は、
政府に不利な情報をコントロールし、
世論操作を行う任務を担っています。
しかし、彼は自身の仕事に疑問を抱き始め
同僚が不審な死を遂げたことをきっかけに
組織の本当の姿に気づいていきます。
吉岡と杉原の立場は正反対ですが、
杉原は次第に政府の隠蔽体質に疑念を深め、
吉岡と接触するようになります。
そして、政府が隠そうとする「国家を揺るがす重大な秘密」に迫ることに。
物語が進むにつれて、圧力や危険が二人に迫り、
杉原は究極の選択を迫られます。
果たして彼は政府の機密を守るのか、
それとも真実を世に伝える道を選ぶのか——。
「新聞記者」を視聴するには
Amazon Prime Video: 現在、Amazon Prime Videoで
『新聞記者』が見放題配信されています。
初回登録の場合、30日間の無料体験期間があり、
その間に視聴が可能です。
松坂桃李さんのコメント:『御上先生』への想い
まず、脚本を手掛けた詩森ろばさんとの初めての共同作業について、
「詩森さんの緻密な脚本に感銘を受け、演じることが非常に楽しみです」と語っています。
キャラクターの深みが引き出されており、自身の演技にも大きな影響を与えているそうです。
また、作品のテーマである「権力と教育」にも触れ、
「この作品を通じて、現代の教育現場や社会問題について一緒に考えていただければ嬉しいです」と視聴者へメッセージを送っています。
さらに、撮影現場の雰囲気についても「皆で一丸となって作品を作り上げています」とコメント。共演者やスタッフとのチームワークが、演技にも良い影響を与えているとのことです。
視聴者からは「松坂さんの演技が説教くさくなく、自然体で良い」
「端的な言葉でコミュニケーションを取るスタイルが新鮮」と高評価の声が上がっています。
「御上先生」の公式ホームページ
TBSテレビの日曜劇場『御上先生』の公式ホームページは以下のリンク
から見ることができます。
また、公式X(旧Twitter)アカウントやInstagramアカウントでも最新情報が発信されています。
これらの公式サイトやSNSアカウントで、最新の情報やコンテンツをご確認できます。
詩森ろばの作風と影響
- 徹底した取材 まず、詩森ろばの作品は、綿密な取材とリアルな描写に基づいている。たとえば、『新聞記者』では、報道関係者への取材を重ね、リアルなストーリーを作り上げた。
- 社会的テーマへの鋭い視点 さらに、教育、戦争、報道、金融など、社会の様々な側面をテーマにしている。したがって、彼女の作品は、観客や視聴者に社会問題を考えさせる力を持っている。
- 感情に訴えるドラマ性 社会問題を描くだけでなく、人間の葛藤や成長も繊細に表現する。こうした要素があるため、観客は登場人物に共感しやすく、作品のメッセージがより強く響く。
おわりに
以上のように、詩森ろばは、現代社会に鋭いメスを入れる劇作家・脚本家だ。彼女の作品は、単なるエンターテインメントではなく、現実社会に生きる私たちに大きな問いを投げかける。人は時として、社会に適応させる為、あえて「自分で考えること」を封印する。「考える」ことの意味を社会に投げかける作品ではないだろうか。